コロナ禍におけるテレワークの推進は企業の潜在的ニーズを炙り出したトリガー

日本版シリコンバレーとして、IT企業が集積している渋谷で、賃貸オフィスの解約が相次いでいるようです。

東京新聞(2021年2月1日)のネット記事で特集されていましたので、よろしかったらご覧ください。

さて、記事によると、コロナ禍によるテレワークの普及により、オフィスを構えている必然性がなくなり、高い賃料のオフィスの解約がIT企業を中心に相次いで発生しているとのことです。

その流れは、一般の大企業にも広がりつつあるとのこと。

記事の中で面白いな〜と思ったのは、渋谷から地方へ本社を移したあるIT企業が、

これまで東京にいないと仕事が取れないと思っていたが、いざ地方に移転しても、取引は減っていない、

と語っていたことです。

ところで、私は今の会社を立ち上げる前に、今から10年以上も前になりますが、空きビルになってしまったビルのオーナーさんと一緒にシェアオフィスを始めました。

実は、そこには今の私の会社も事務所を構えているのですが、

立地は、横浜郊外のニュータウンの外れ、という当時も今も、オフィスの立地としてはなんとも中途半端な立地です。

当時、シェアオフィスという言葉はまだあまり使われていなくて、レンタルオフィスという呼び方が一般的でしたが、

コロナ騒動の前までもそうですが、当時レンタルオフィスを借りる人の真のニーズは大きく2つありました。

一つ目は、手軽な値段や初期コストで、オフィスとして必要な分だけのオフィス機能、つまり作業をしたり、打ち合わせをしたりするスペースが欲しい、というものです。

二つ目は、対外的な住所が欲しい、というものです。

さて、コロナ禍によるテレワークの普及によって、二つ目のニーズが半分くらい消滅してしまったのではないかと思っています。

実は、この二つ目のニーズについては、これも2つに分類することができます。

一つは、特に女性の起業家などに多いのですが、自宅の住所を公開したくない、というニーズです。

これについては、コロナ禍によるテレワークの普及にはあまり影響されないものと思います。

さて、もう一つは、駆け出しの起業家の方やブランドイメージの大切な先生業、逆にそれなりに大きな企業の新規営業所などに多いニーズなのですが、

会社の住所をそれなりの場所、例えば、東京なら銀座とか日本橋、六本木、新宿など、横浜だったら関内とか横浜駅周辺といった、

とにかく対外的に見栄えの良い中心市街地に事務所を構えているということを顧客や取引先などにアピールしたい、というニーズです。

ちなみに、このニーズについては、先程お話しした私が関わったシェアオフィスでは、当初から全く期待しておりませんでした、笑

さて、何やかんや言って、これまでのシェアオフィスのニーズとしては、またオフィス全般のニーズにも言えることだと思いますが、皆さん格好悪いのであまり本音を口には出さないだけで、結構このニーズは多かったのではないかと思います。

ところが、今回のコロナ禍による在宅ワーク、テレワークの普及、というよりか、国を挙げての大号令によって、

家で働くこと、つまり職場の住所が、いかにも見栄えのする中心地の住所じゃなくて、郊外の、近隣に住んでいる人以外にはよく分からない地名であったとしても、

『うちの会社は積極的に在宅ワークやテレワークをやっていて、コロナ対策に貢献しているんですよ!』

という感じで、今まで自分が気にしていたことに対する言い訳が公然とできるようになった、というのが、ニーズの変化の大きな原因だと思っています。

だいぶ前の事例になりますが、『クールビズ』の時と同じ構造ですね。

あの当時の年配のビジネスマンにとって、真夏のカンカン照りで首筋から背中にかけて大量の汗がネトッとしたたる中、ネクタイを締めるのがどんなにが辛くても、ノーネクタイで会社に行くなんてことは、仮に優しい上司が『いいよ!』と言ってくれても、世間の目を気にしがちな典型的な日本人にとっては、会社や世間の大多数が同じことをしてないと中々できるものではありませんでした。

そう言えば、あの時も小池さんでしたね、笑

表面のニーズと潜在的なニーズの違い。

そして、潜在的なニーズを顕在化するためのトリガーの存在。

つまり、潜在的なニーズがあって、それをやりたくても、やった後の言い訳が用意されているかどうか?

以上分析してみると少し複雑な思いがしますね。

個人的には周りの意見を拝聴しながらも、できるだけ主体的な選択を心掛けていきたいと思っています。