遺留分算定方法の見直し(相続法の改正)

昨日に引き続き、遺留分制度の見直しについてお伝えします。

本日は、遺留分の算定方法の見直しについてです。

1.遺留分算定の基礎となる財産

遺留分を算定するにあたっての基礎となる財産については、

被相続人が相続開始時に有していた財産の価額に、生前に贈与した財産の価額を加え、さらにそこから債務を差し引いて算出しますが、

今回の法改正において、

遺留分算定の基礎となる財産の範囲について見直しがなされました。

2.法定相続人以外の者への贈与

法定相続人以外の者への贈与については、

改正前から、

  • 相続開始前の1年間にされた贈与についてのみ、遺留分算定の基礎財産に算入される。
  • ただし、当事者双方が、遺留分権利者に対して損害を加えることを知った上で行った贈与については、1年以上前の贈与であったとしても算入される

とされていましたが、

改正後も内容の変化はありません。

3.法定相続人への贈与

一方、法定相続人(共同相続人)への贈与については、

改正前においては、

相続開始の何年前の贈与であったとしても、遺留分算定の基礎財産に算入されることになっていました。

しかし、改正後は、

相続開始前の10年間に贈与された財産に限って遺留分算定の基礎財産に算入されることになりました。

これによって、10年以上前に行われた自社株の贈与などについては、遺留分侵害額請求の対象とはならないことになりました。

ただし、法定相続人以外への贈与の場合と同様に、当事者双方が、遺留分権利者に対して損害を加えることを知った上で行った贈与については算入される、ということは改正の前後で変わりません。

したがって、改正後であっても、当事者双方が悪意で行った贈与については、10年以上前に行われていたとしても、遺留分算定の基礎財産に算入されることになります。

4.財産評価の時期

ちなみに、遺留分算定における財産評価の時期については、

「贈与された時点」ではなく「相続開始時」が基準となりますので注意が必要です。

例えば、

会社の先代から自社株の生前贈与を受けた場合、後継者自身の貢献によって、その後に贈与財産である自社株の価値が上昇したときは、

自社株の生前贈与の時点の価額ではなく、相続開始時の価格で評価され、遺留分算定の基礎財産に算入されることになります。

5.改正の影響

改正前までは、

早期から計画的に後継者を決めて事業承継のために自社株の贈与等を行っていたとしても、法定相続人に対する贈与は何年前のものであったとしても全て遺留分算定の基礎財産に算入されていました。

しかし、改正後は、

例えば、会社の先代の父親が後継者の子供に自社株を贈与した場合には、少なくともその後10年間元気で生きていてくれれば良いということになったため、できる限り早い段階での事業承継対策の必要性が強くなってきました。

また、後継者に対する事業承継においては、贈与税の軽減を目的とした110万円までの暦年贈与によって自社株や土地・建物をコツコツ長期間に渡り贈与するケースがありますが、

この場合、贈与税は少なくて済みますが、被相続人の死亡時から10年前までの贈与財産については遺留分侵害額請求の対象となってしまいます。

以上より、今後はより計画的な早期の事業承継対策が必要になってくるものと思われます。